「今日は天気が微妙だから仕事やめとくか…」
林業家はなかなかそうもいきません!
- 毎日天気予報を見て、
- 天気予報が当たらなくても、
- 山でスマホの電波が入らなくても、
- 身体で変化を感じ取りながら、
常に天気と向き合い危険を回避しています。
私は林業の裏方(営業•森林調査•設計•管理•事務)に17年程度携わっており、関東〜九州の4箇所の林業事業体で働いてきました。また林業のかたわら気象学の学校に1年間通いました。{気象予報士資格は学科試験(一般知識•専門知識)は合格したものの実技試験で2度落ち持ってません…}
この記事では、林業と天気の関係について解説しています。具体的には、
- 日本の天候と大雨•強風を伴う天候
- 事前に大雨•強風を予測する手段
- 林業現場で急な大雨•強風になったらどう避難するか
という内容になっています。
この記事を読むことで、大雨、強風被害を回避できるようになります。
林業の関係者
(林業の裏方、現場作業員、森林所有者等)
山の利用者
(登山者、山菜採り、猟師、渓流釣り人等)
林業への就業•転職を考えている人
日本の天候と大雨•強風を伴う天候

日本は中緯度で大陸と海の境目にあります。よって暖気(赤道の影響)、寒気(北極の影響)、乾燥(大陸)、湿潤(海)を組み合わせた4つの気団(※1)の影響を大きく受けます。それらに上空の偏西風(※2)が加わり日本の四季をつくり、林業も基本的に四季の影響を受けています。
(※1)日本の北西にシベリア気団(冷たく乾燥)、南西に長江気団(暖かく乾燥)、北東にオホーツク海気団(冷たく湿潤)、南東に小笠原気団(暖かく湿潤)。
(※2)中緯度上空で西から吹く恒常風。位置•蛇行は高気圧•低気圧を発生させる要因になり、蛇行が大きいと異常気象の要因にもなります。
冬(12月〜2月)
冷たく乾燥したシベリア高気圧(シベリア気団)と比較的暖かい海上とで、西高東低の気圧配置となります。強い北西の風が吹くため日本海側は雪、太平洋側は乾燥した晴れとなる。偏西風は強まり日本全体を覆う。
森は休眠状態に入り水分量が少なく、林業では伐採の最盛期である。とにかく寒いですが比較的天候も安定しており作業に適しています。
特に注意すべき天候と特徴
強い冬型の気圧配置(※)
日本海側に大雪•暴風被害
太平洋側は強風による山林火災
(※)上空5000m付近にー36℃以下の強い寒気がある時、日本海を渡る寒気が発達した積乱雲を発生させる。
春 (3月~5月)
シベリア気団は弱まり、代わりに中国大陸の暖かく乾燥した長江気団が偏西風に乗って移動性高気圧としてやってきます。西から東に低気圧と交互に通過するため、3〜4日で晴れと雨が繰り返されます。
森は成長が盛んになり水分量が増えます。林業では伐採木が腐りやすく素材生産には不向きですが、植林には向いてます。大規模な気象災害の頻度は少ないものの、強力な一撃があるのもこの時期の特徴です。
特に注意すべき天候と特徴
以下3つは「春の嵐」、「メイストーム」と呼ばれ台風並みの爆弾低気圧になることがあります。
南岸低気圧(※1)の発達
予報が当たりづらい
特に太平洋側に季節外れの大雪と着雪害(湿った雪は重く立木•枝をへし折る)
日本海低気圧(※2)の発達
春一番で有名な強い南風
通過後の急激な気温変化
全国的に大雨(大雪)•強風被害、積雪地は雪崩•洪水被害が発生
二つ玉低気圧(※3)
スピードが速い
急速に発達
全国的に大雨(大雪)•強風被害
(※1)日本の南岸八丈島付近を発達して通過する低気圧で、太平洋側に寒気を引き込む。
(※2)日本海を東〜北東に発達して通過する低気圧で、全国的に暖気を引き込む。
(※3)南岸低気圧と日本海低気圧が同時発生し、東海上でまとまりさらに発達。
夏(6月~8月)
夏になっても冷たい海上のオホーツク海気団と太平洋の暖かい小笠原気団の境目に梅雨前線が現れる。太平洋高気圧(小笠原気団)の勢力が強まると梅雨明けし晴れることが多い。偏西風は弱まり日本の北に移動し、弱い南東の風が吹く。
森はやや成長がゆっくりになりますが、虫害が多く素材生産は控え下刈シーズンです。絶えず熱中症の危険にさらされます。また土砂災害も発生しやすい。
特に注意すべき天候と特徴
梅雨前線が停滞し全線が活発
予報が当たりづらい
連続して暖かく湿った空気が流入
前線付近に集中豪雨が発生
積乱雲(※)の発達
予報が当たりづらい
局地的•短時間に集中豪雨、雷、竜巻が発生
(※)上空に寒気があり地表に暖かく湿った空気がある時に発達
秋(9月~11月)
太平洋高気圧(小笠原気団)が弱まると、南下したオホーツク海気団との間に秋雨前線が発生。その後は春と同じように移動性高気圧(長江気団)が西から東に低気圧と交互に移動していきます。
森は休眠の準備を始め、林業の伐採シーズンの始まりであると同時に、林業家が最も災害に木を病む時期でもあります。
特に注意すべき天候と特徴
台風(※)
台風付近に暴風、集中豪雨、雷による甚大な被害
特に進行方向右半円が危険
台風が予報円に入る可能性は約70%
(※)熱帯の海上で発生、太平洋高気圧と偏西風に沿って移動。
事前に大雨•強風を予測

気象庁(降水の有無の適中率の例年値)によると週間天気は67%、明日の天気は83%当たっています。難しいことは気象予報士にまかせ、とにかく毎日天気予報を見ることが重要です。
今日〜数日先の天気は天気予報から予測
気象庁から発表される大雨•強風を予測する防災気象情報は以下のとおり。
- 現象発生の
約5日前台風に関する情報(台風強度予報)(台風進路予報)台風が発生したときや、台風が日本に影響を及ぼすおそれがあるか、すでに影響を及ぼしているとき発表。
数日〜
約1日前大雨•暴風等に関する気象情報全国•地方•都道府県に分け発表。
警報•注意報に先立って注意を呼びかけたり、警報•注意報を補完したりする情報。参考:気象庁ホームページ「気象情報とは」- 半日〜
数時間前大雨注意報市区町村別に発表。
土壌雨量指数基準(地面にしみ込んだ雨量)に従い、市町村ごとの基準値を超えると予想される時に発表。
強風注意報
平均風速がおおむね10m/sを超える場合(地方により基準値が異なる)。
参考:気象庁ホームページ「気象警報・注意報」、「警報・注意報発表基準一覧表」 - 数時間〜
2時間程度前大雨警報(土砂災害)注意報に同じ。
暴風警報
平均風速がおおむね20m/sを超える場合(地方により基準値が異なる)。 - 数時間〜
2時間程度前大雨特別警報(土砂災害)市区町村別に発表。台風や集中豪雨により数十年に一度の降雨量となる大雨が予想される場合に発表。
暴風特別警報
数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により暴風が吹くと予想される場合に発表。
参考:気象庁ホームページ「気象等に関する特別警報の発表基準」 - 大雨警報発表下土砂災害警戒情報
市区町村別に発表。
降雨による土砂災害の危険が高まったときに、市町村長が避難指示を発令する際の判断や、自主避難の参考となるよう、都道府県と気象庁が共同で発表している防災情報。参考:気象庁ホームページ「土砂災害警戒情報」 - 大雨警報発表下記録的短時間大雨情報
記録的な短時間の大雨を観測した観測点名、また解析した市町村名を発表。
数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨があるとき、現状把握と今後の注意のため発表する情報。参考:気象庁ホームページ「記録的短時間大雨情報」
林業現場では1〜2日あれば緊急の対策はできますので、「台風に関する情報」または「大雨•暴風等に関する気象情報」を確認しておけば対策はできます。
危険なのは注意報が発表されている時です。当日の朝は平気でも急に警報•特別警報に変わる可能性があります。
雨に関して
1時間に20ミリ以上の強い雨(傘をさしていても濡れる)が降ったり、降り始めてからの雨量が100ミリをこえると、土砂災害が起こりやすくなるといわれています。
参考:気象庁ホームページ「雨の強さと降り方」
風に関して
風速20以上〜35未満
「細い木の幹が折れたり、根の張っていない木が倒れ始める」
風速35以上
「多くの樹木が倒れる」となっています。
参考:気象庁ホームページ「風の強さと吹き方」
今日〜数時間先の天気は雨雲レーダー•雲から予測
雨雲レーダーは数分〜数時間先の大雨を予測するためのものです。
代表的な雨雲レーダーを紹介しますので使いやすいものをお使いください。
外部リンク気象庁
「雨雲の動き」、「今後の雨(降水短時間予報)」
外部リンクウェザーニュース
「全国の雨雲レーダー」
外部リンク日本気象協会
「雨雲レーダー」
雲は数分先の大雨•強風を予測するためのものです。
雨を降らす雲には乱層雲(※)と積乱雲がありますが、特に注意すべきは積乱雲です。空が暗くなる、急に冷たい風が吹く、雷が鳴る場合は避難しましょう。
(※)しとしと降るのが特徴で、前線•低気圧が近づくと1〜3日程度前から巻積雲→巻層雲→高積雲→高層雲→乱層雲の順番で雲が変化していきます。
天候があやしい日は朝と昼休みに雨雲レーダーを見ましょう。ただし林業現場では電波が通じないことがよくあります。その場合は雲の発達具合を見て判断するしかないです。
林業現場で大雨•強風になったら避難

林業現場で急な大雨•強風(ほぼ積乱雲)に遭遇することはあります。レーダーが外れている時もあれば、雲で判断できていても山奥にいれば避難できないこともあります。
まずは近くに避難
ここで注意すべきことは低体温症と落雷です。服が濡れると一気に体温が下がるので、カッパがあれば着ましょう。雷がある場合は大木から4m以上離れ姿勢を低くして待機。
可能であれば下山
林業現場であれば倒れた木材が落下しやすくなるし、沢付近は土砂災害の危険もあります。なるべく安全そうな地形(尾根•道)を落ち着いて歩き車に避難しましょう。
車で避難
林業現場には安全な避難施設等はないので、車に避難することが多いですが、車の位置に注意しましょう。谷を横断する道は崩れることもあるし、斜面上方から倒木•土砂災害の危険もあります。また雷がある場合は窓を閉めておきましょう。
まとめ
気象学の先生に言われた言葉
「鍋に水を入れて火にかけたら沸騰するのは100%分かる。しかしどこで始めの気泡が発生するか予測できるか?これが気象予報である。」
林業では以下の大雨•強風を伴う天候に気をつけましょう。
強い冬型の気圧配置
南岸低気圧の発達
日本海低気圧の発達
二つ玉低気圧
梅雨前線が停滞し全線が活発
積乱雲の発達
台風
林業では以下を利用し事前に大雨•強風を予測しましょう。
毎日天気予報を見る
今日〜数日先は防災気象情報
注意報が発表されている時は用心。
今日〜数時間先は雨雲レーダー•雲
空が暗くなる、急に冷たい風が吹く、雷が鳴る場合は避難。
林業現場で急な大雨•強風になったら以下に注意して避難しましょう。
まずは近くに避難
低体温症と落雷に注意
可能であれば下山
転倒•土砂災害に注意
車で避難
車の位置に注意
コメント