林業の裏方(営業•森林調査•設計•管理•事務)が使う資料•書類!

林業×裏方×資料•書類 基本編
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山に入る前に情報が欲しい!
山に入った後に手に入れた情報を利用したい!

じつは林業には裏方(営業•森林調査•設計•管理•事務)がいて、多くの資料•書類を利用•作成し、山の情報を扱う仕事を行なっています。

なぜなら、山に入るには資料がいるし、山の情報を第3者に伝える為には、言語化、数値化、平面化した書類が必須になります。

私は林業の裏方に17年程度携わっており、国内4箇所の林業事業体で働いてきた。林業は土地に根ざした仕事であり、地域によって違いはあるが、本質的に仕事内容は同じである。

この記事では、林業の裏方が扱う資料•書類を紹介します。また次の記事と対になっています。

この記事は、主に以下の人々に役立つ知識になります。
・林業の裏方(森林施業プランナー•事務方•森林調査員等)の新人
・林業への就業•転職を考えている人
・山•林業の関係者または利用者…森林所有者、登山者、山菜採り、猟師、渓流釣り人等…

結論、林業の裏方が扱う資料•書類を知ることで、山を読み解き、山を説明できるようになります。

林業の裏方の仕事はいかに資料•書類を使いこなすかだ!

地図がばら撒かれている写真

林業の裏方が資料•書類を扱う理由は、山に関する情報を、資料をもとにデータ化•書類にし、自ら利用し、また関係者に提示•説明•提出する必要があるからです。

資料•書類の使い道
営業…山林情報•所有者情報資料の利用、調査•設計資料の提示•説明、契約書類の提出
森林調査…山林情報資料の利用、調査書類作成
設計…山林情報•調査•積算根拠資料の利用、設計書類作成
管理…調査•設計資料の提示•説明、管理書類作成•利用
事務…国や地方自治体•調査•設計•管理資料の利用、契約•提出書類の作成

すなわち、仕事のほとんどが資料•書類と向き合っています。林業の裏方は山のプロであると同時に、資料•書類を読み解く能力、作成できる能力、説明できる能力が必要なのです。

林業の裏方の必要資料•書類

ノートとペンの写真

それでは裏方の仕事内容(営業•森林調査•設計•管理•事務)に応じて扱う資料•書類を説明していきます。

営業•森林調査•設計で使う資料

森林計画図

地番の位置を特定するのに使う地図

地域森林計画(※1)の対象となる民有林の区域を表す図面。1/5,000の等高線図に林小班(※2)等を示してある。公図•地籍図に変わるものとして良い資料である。航空写真や聞き取りをもとに作成されているので、現地と必ず整合している訳ではない。
※1 都道府県が作成する5年1期の森林計画
※2 森林を地番•樹種•林齢等によって分けた独自の区画

※各地方自治体が持っており、森林所有者または森林所有者本人から委任を受けたもの(林業事業体等) でないと閲覧・交付できない場合があります。具体的には各市町村窓口に問い合わせることをお勧めします。

最近はオープンデータ化も進んでおり、森林計画図がどういうものか知りたい方には、宮崎県のものが分かりやすかったので外部リンク宮崎県森林地理情報公開システム】を紹介します。

森林簿

地番の森林情報を調べるときに使う資料

林小班(※1)ごとに地番、所有者、面積、樹種、林齢、材積、制限区域等を取りまとめた帳票。森林計画図と対応しており、2つで1セットです。森林簿の精度は各都道府県により違います。
※1 森林を地番•樹種•林齢等によって分けた独自の区画

※各地方自治体が持っており、森林所有者または森林所有者本人から委任を受けたもの(林業事業体等) でないと閲覧・交付できない場合があります。具体的には各市町村窓口に問い合わせることをお勧めします。

航空写真

空から森林の様子を見る時に使う資料

各社所有のGIS、google map、国土地理院ホームページでも閲覧できる。慣れればどんな木が生えているか現地に行かずに分かるが、林内までは分からないので、あくまで参考資料。

航空写真の精度が高く、年代別の写真、作図機能を有したおすすめサイトを紹介します。
外部リンク地理院地図(電子国土Web)】国土地理院ウェブサイト

営業で使う資料

固定資産税の納税通知書•名寄帳

地番が誰の所有か調べるときに使う資料(森林所有者が所持)

毎年4~6月に森林所有者に届く。地番が記載されてあるので所有状況が分かる。
※山林の課税評価額30万円以下•保安林の場合は非課税で、納税通知書は届きませんので、名寄帳(※1)で確認しましょう。
※1 個人が所有している不動産の一覧表で、非課税でも記載される

登記簿

地番が誰の所有で、地目(宅地•畑•山林等)が何で、面積(㎡)がどれくらいか調べるときに使う資料

住所•氏名•地番•地目(宅地•畑•山林等)•地積(㎡)等が記載されており、最も信頼度が高い資料です。法務局へ行けば誰でも有料で取得できます。基本的には住所•氏名を調べるため利用します。

ネット上で登記情報を確認できるサービス(要事前登録•有料)もあります。全部事項、所有者事項(住所•氏名のみ)、地図等が取得できます。
外部リンク登記情報提供サービス】一般財団法人 民事法務協会

※所有者が登記を変更していなく、「今はない住所」や「昔の人の名前」になっている場合も多々あります。こうなると聞き込み調査か現地調査以外方法はありません。

電話帳

電話番号が知りたいときに使う資料

登記簿に電話番号はのっていないので、新規営業の場合、連絡を取るにはこれしかないです。また、ネットで全国の電話帳を掲載しているサイトもありますが、プライバシーの侵害になるかどうか、それぞれ意見があるので利用は個人の判断に任せます。

森林調査で使う書類

調査票

プロット調査(※)を行う際、森林情報を書き込む表
※ 対象とする同一の森林で、一定の面積の標準地を抽出し、調査結果を面積比によって同一の森林全体の結果とみなす方法。
(例)1haのスギ林の本数を数える場合
まずスギ林の平均的な本数密度と思える場所で、10m×10m(100㎡)をテープで囲み、中の本数を数える。もしスギが10本立っていたら、1ha(10,000㎡)にはスギが1,000本立っているだろうとする方法。

立木調査における調査内容(樹種•本数•樹高•胸高直径•木の良し悪し•林齢•下草の状況等)は概ね同じなので、あらかじめ表を作っておけばメモ帳より効率化できて良い。

設計で使う資料

PCソフト(GIS、excel、word等)

森林情報をPC上で管理するソフト

GIS(地理情報システム)とは、様々なデータを電子地図の上に層(レイヤ)ごとに分けて載せる事によって、情報を視覚的に分かりやすくする技術です。例えば、森林計画図森林簿•航空写真が重ねて表示され、新しく取ってきた山の情報(測量図•路線図等)も重ねて表示できたりし、非常に便利です。高価なソフトなので森林組合等は持っていますが、小さい林業会社ではなかなか手が出せません。excel、wordはよく使うが基礎的な使い方だけで十分。

細り表

採材寸法(伐採した木をどの長さに切断するか)を決めて、材積を算出する表

樹高と胸高直径(木の地上1,2m付近の直径)から丸太の末口径(丸太の細い方の小口直径)を予測する資料。末口径が分かれば、末口径×末口径×長さで材積が算出できます。

例:樹高20m胸高直径25cmだと、細り表によるとスギ4mの丸太の末口径は22cm、8mで18.6cm、12mで14.5cm、16mで8.9cmです。という事はこの一本のスギから4mの丸太4本が取れ、材積は0.44㎥であると分かります。

暖かい地域と寒い地域では木の成長が違うので、細り表の数字も変わります。地域に対応した細り表を使いましょう。

細り表アプリ(無料)を使えば、数字を打ち込むだけで自動計算してくれます。北海道、山形県、静岡県、長野県,愛知県、岐阜県、山口県が対応エリア(2022年現在)
アプリは、Google Play Store、Apple App Storeで「細り表」と検索、ダウンロード

木材相場表

原木の価格を知る表 ※前回の市で売れた原木の価格

原木相場表、市場相場表、市況情報等よび名は様々だが、樹種•長さ•太さごとに直材(高値•中値)•小曲がり•曲がりで原木価格が公表されている。平均単価、市売の現況、今後の見通し等も記載されてある。今どんな材が高く売れているかを知れば、伐採の時期•採材(伐採した木をどの長さに切断するか)の判断材料になります。

単価表

見積書の作成に使う表

林業では、自社で持つ単価表と都道府県作成の標準単価表が使用頻度は多い。

自社が持つ単価表とは、過去の日報等から算出した工程別単価(作業道開設•伐採•木寄せ•造材•運材)、資材費、諸経費、手数料等、また他社との契約による単価、機械回送費、トラック運搬費、作業請負費等が会社によって決められている事が多い。
都道府県作成の標準単価表とは、補助金算出の根拠となるのもので、毎年更新される。森林整備に関わる作業が、施行区分ごとの単価として公表されている。

※公共工事では自治体が定める積算基準及び歩掛表をもとに工事費用を算出する。

営業•設計で使う書類

見積書

営業•契約の時に提出する書類

設計の結果として作成され、収入ー経費=精算金が分かるようになっている。様式は各社自由だが、なるべく金額の詳細がわかる方が良い。

作業計画図

営業•契約•その他関係者への説明の時に提示する図面

設計の結果として作成され、山の情報•作業内容•作業方法を森林計画図に書き写し、視覚的にどのような作業を行うのかが分かるようにする。

管理で使う書類

作業指示書

現場作業を行う班長に、作業内容•作業方法を指示するための書類

作業前に作成。現場を実行する為に必要な情報•図面を記載する。現場ではゆっくり資料を読むこともないので、なるべく1枚にする。

現場管理表

林業の裏方自身が現場管理においてやるべき事をリストアップした表

作業前に作成。現場監督はやるべき事が多いので、作業前〜作業後と順序立てて作成し、手順に漏れがないか確認するために必要。

現場関係者リスト

現場に関係する会社•人の連絡先、やるべき事をリストアップした表

作業前に作成。現場監督は関係者との折衝が多いので、トラブルが発生した際すぐ連絡が取れる、関係者に対し行う手順に、漏れがないか確認するために必要。

進捗管理表

現場の進捗状況を記載した表

作業中に作成。計画に対して実際どのくらい進んでいるのか把握するのは、現場運営に欠かせない。

営業•事務で使う書類

契約書

作業前に各関係者と契約を締結する書類

・森林経営委託契約書

森林所有者が森林経営計画に参加する(森林の経営を委託する)ための契約書

契約期間は5年以上になっています。様式があり、委託事項として施業の実施、森林の保護等が記載されており、A4で3~4枚のボリュームがある。委託者と受託者で締結し双方保管する。

・同意書、承諾書、覚書等

林業事業体等が提案する地番•作業内容•作業方法•その他補助金にかかる説明に、森林所有者が同意し作業を依頼する書類

森林経営委託契約書には具体的な施業内容が記載されていないため、これらの書類で補完する。双方で保管。

・立木売買契約書

立木の買取にかかる契約書

皆伐の場合、見積書を提出し双方納得すれば、林業事業体が木材を買取るという形を取る事が多いです。もちろん作業が完了して精算することも可能ですが、仮に赤字になった場合、森林所有者が費用を負担することになります。

・請負契約書

国•地方自治体や業者と、作業を請負でする場合に必要な契約書

・借地契約書

木材置場がほとんでですが、車や資材の置場として他人の土地を借りる際の契約書

事務で使う書類

森林経営計画

地域の森林をまとめて、計画的に施業し、管理していこうという5年1期の計画

具体的には、集落単位で複数の森林所有者に営業し、森林委託契約を結び、委託された森林を一体的に取り扱い、間伐等作業計画を5年間にわたり立てる。
作成の主体は「森林所有者」や「森林の経営を委託を受けたもの」となるが、主に森林組合•林業会社が立てることが多い。
認定を受けるためには始期の20日前までに市町村に認定請求を提出しなければならない。
メリットは補助金が使える、チップ材が高く買ってもらえる、計画作成や集約化のための活動の経費が出る等です。参加森林所有者は税制の特例措置があります。
デメリットは計画作成•変更の書類が多い、必要な面積(一定区域内において30ha以上等)を集めなければならない、すぐ作業できない等があります。

より詳しく森林経営計画について知りたい方は
参考資料:林野庁ウェブサイト外部リンク森林経営計画制度の概要(令和3年4月)

保安林許可申請•届出

施業予定箇所が保安林である場合、各都道府県に許可申請•届出が必要である。

・保安林内立木伐採許可申請書

保安林内で立木の皆伐•択伐する時の申請書

作業日30日前までに「保安林内立木伐採許可申請書」提出→決定の通知→「保安林内立木伐採着手届」提出→作業開始→作業完了後30日以内に「保安林内立木伐採届出書」を提出。

・保安林内作業許可申請書

保安林内で土地の形質を変更(作業道開設等)する時の申請書

「保安林内作業許可申請書」提出→決定の通知→「保安林内作業許可着手届」提出→作業開始→作業完了後に「保安林内作業許可完了届」を提出

・保安林内間伐届出書

保安林内で間伐する時の届出書

作業日20日前までに「保安林内間伐届出書」提出→決定の通知→作業開始

・同意書

森林所有者より保安林内作業の同意を得る書類

上記保安林の申請•届出に添付する書類。

伐採届

山で立木の伐採を行う時に市町村に提出する義務がある届出書

作業開始の30日前までに伐採届(伐採及び伐採後の造林の届出)提出→決定の通知→作業開始→作業完了後30日以内に「伐採に係る森林の状況報告書」を提出。なお森林経営計画に基づいて伐採を行う場合は、作業開始前に提出する書類は無く、伐採完了後30日以内に「森林経営計画に係る伐採等の届出書」を提出します。

補助金関係書類

林業の施業に対しての補助金申請書

作業後に都道府県に提出。ここで言う補助金とは国補事業を指し、都道府県や市町村の単独事業ではありません。国補事業の中にも補助事業の種類が多くありますが、一番多く使われているのが、森林環境保全直接支援事業です。
事業内容森林経営計画の認定者が、地域森林を取りまとめ計画的に施業を行うことを目的にしてます。
主な補助内容は、植林•下刈•除伐•間伐•鳥獣害防護対策•路網整備等があります。
この事業を使う場合には、林野庁の森林環境保全実施要綱•要領等、また都道府県の〇〇事業実施要綱•要領•要領の運用•補助金交付要綱等を事前に確認し、内容に沿った施業を行い、施業後に補助金交付申請を行い、検査を合格すれば、補助金受領となります。

精算書

森林所有者へ精算金の詳細を記載した書類

森林所有者に作業完了後に提出。林業では収入(木材売上+補助金)ー経費(作業費+諸経費+その他手数料)=精算金という形を取ることが多い。

ノートに文字を書く人の写真
資料を忘れて山に入ると、調査精度が落ち何度も山に入ることになるので、段取りは非常に重要です!

まとめ

林業の裏方が扱う多くの資料•書類を理解いただけたでしょうか?

林業の裏方が扱う資料•書類は次!

営業
森林計画図、森林簿、航空写真、固定資産税の納税通知書•名寄帳、登記簿、電話帳、見積書、作業計画図、契約書
森林調査
森林計画図、森林簿、航空写真、調査票
設計
森林計画図、森林簿、航空写真、PC (GIS、excel、word等)、細り表、木材相場表、単価表、見積書、作業計画図
管理
作業指示書、現場管理表、現場関係者リスト、進捗管理表
事務
森林経営計画、保安林許可申請•届出、伐採届、補助金関係書類、精算書契約書

重要な資料•書類はなるべく書くようにはしたつもりですが、実はまだまだ書き切れないくらいの資料•書類があります。

慣れてくると書類を見ただけで山が目の前に立ち上がってきたり、山に入ると立体が平面化してくる体験があったりします。やはり林業は面白い!

補足
林業に書類が多い理由の一つは、国•地方自治体への提出書類の多さです。森林は個人で所有できても、森林法によって規制があります。確かにやりたい放題木を伐っていると、国土は疲弊しますので当然とも言えますが、莫大な量の書類を読み解き、作成し、第3者に説明するのはなかなか大変です。
もう一つの理由は山が動かないことです。近年、山に出向く森林所有者は少なく、知識がある人も少なくなってきているので、山の説明資料の作成に時間がかかります。

もし、あなたが林業の裏方が使う資料•書類に興味を持って、林業の裏方の仕事山道具も知りたいと思う方は⬇︎

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