林業における森林の種類!(林業の裏方が歩く山々)

林業×森林の種類 基本編
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この山でやりたい事がある!
…でも

  • どういう森なの?
  • 手をつけて良いのか?
  • 誰が所有してるの?
  • 何か許可がいるのか?

じつは、見えてる景色だけでは森林を語ることはできないのです。

なぜなら、森林は観点によって様々に名称を変えるからです。すなわち、見えている景色は、いくつもの森林をあわせ持っています。そして、可能な行為も限られてくるのです。

私は林業の裏方(営業•森林調査•設計•管理•事務)に17年程度携わっており、国内4箇所の林業事業体で働いてきた。林業は土地に根ざした仕事であり、地域によって違いはあるが、本質的に仕事内容は同じである。

この記事では、森林の種類を、林業の裏方の視点で紹介します。

この記事は、主に以下の人々に役立つ知識になります。
・林業の裏方(森林施業プランナー•事務方•森林調査員等)の新人
・林業への就業•転職を考えている人
・山•林業の関係者または利用者…森林所有者、登山者、山菜採り、猟師、渓流釣り人等…

結論、森林の種類を知ることで、目の前に広がる山を分類でき、何ができるかが分かります。

森林の定義

森林の定義は辞書、国際連合食料農業機関(FAO)、京都議定書等さまざまですが、日本の森林法の定義では次のようになっています。

この法律において「森林」とは、左に掲げるものをいう。但し、主として農地又は住宅地若しくはこれに準ずる土地として使用される土地及びこれらの上にある立木竹を除く。

 木竹が集団して生育している土地及びその土地の上にある立木竹

 前号の土地の外、木竹の集団的な生育に供される土地

引用:森林法(第2条)

ということは、皆伐跡地の木がない土地は「森林である」が、畑や果樹園、公園、住宅地が樹木で覆われた場所は「森林ではない」という事だ。

裏方の視点 一見どうでも良さそうですが、林業では「森林」に対して、許可申請•届出が必要であったり、補助金が出たりするので要注意です。

観点ごとの森林の種類 

森林の種類は、観点によって分類することができます。大きなとこから順番に分類を見ていきながら、林業との関係を解説します。

気候による分類

森林は、気温や降水量によって幾つかの森林帯に区分されます。ここで言う森林とは、自然に発生した森林を指します。

亜寒帯林
年平均気温6℃以下に発達する森林。エゾマツ・トドマツなどの針葉樹を主とする。
日本では北海道の東部•本州の山岳上部に分布。

カラマツ林の写真

冷温帯林
年平均気温6〜13℃に発達する森林。ブナ・ナラ・カエデなどの落葉広葉樹を主とする。
南は長野から北は北海道西部、西日本の山岳部に分布。

ブナ林の写真

暖温帯林
年平均気温13〜21℃に発達する森林。シイ・カシ・クスノキなどの常緑広葉樹を主とする。
南は九州から北は新潟•福島まで分布。

カシ林の写真

亜熱帯林
年平均気温21℃以上に発達する森林。ガジュマル•アコウ•ビロウなどを主とする。
日本では沖縄や南西諸島、小笠原諸島に分布。

ガジュマルの木の写真

裏方の視点 林業で主に扱うのは植林された木であるので、気候による分類は、基本的にはあまり関係ありません。もちろん、林業の主要樹種であるスギ•ヒノキは「冷•暖温帯林」が育成に適しています。しかし、元来そこにあるべき森林を知ることは、森林の過去•現在•未来を考察するのに役立ちます。

樹種による分類

主要な樹木の集まりによって分類される森林で、気候による分類と相関関係があります。元々日本はほぼ広葉樹林でありましたが、現在は針葉樹の大規模植林により、針葉樹と広葉樹の割合は概ね半分づつです。

針葉樹林
針のような細い葉をつける樹木で構成される森林。主に寒い地域に広がり、生産性が高い。材は通直で加工しやすいため主に建築材として利用。
林業の主要樹種である、スギは九州から北海道南部まで分布。ヒノキは九州から東北南部まで分布。カラマツは本州中部から北海道全域まで分布する。

モミ林の写真

落葉広葉樹林
広く平たい葉をつけ、冬に落葉する樹木で構成される森林。主に冷温帯に広がり、公益的機能(生物多様性、土砂災害防止、水を養う機能等)が高い。材は硬く、重く、太く、曲がり枝分かれが多く、加工しづらい。昔は薪や炭の原料として多用されていた。現在では、建築材の一部や家具等に利用されている。林業では雑木と呼ばれ、主に製紙用、燃料用のチップ材として利用。

妙高山燕新道の紅葉の写真
妙高山燕新道の紅葉

常緑広葉樹林(照葉樹林)
広く平たい葉をつけ、冬に落葉しない樹木で構成される森林。葉は深緑で光沢がある。主に暖温帯に広がり、機能•材の特徴•使い道は落葉広葉樹と似ている。日本の原風景とも言われた照葉樹林は、伐採を繰り返すことで落葉広葉樹に遷移してしまうこともあり、国内では大部分が失われている。

綾町の照葉樹林の写真
綾町の照葉樹林

裏方の視点 林業は上記3つの樹種で行われていますが、国内木材生産の主要樹種がスギ•ヒノキ•カラマツ等であることから「針葉樹林」が中心になります。ただし、実際には混交林(針葉樹と広葉樹が混ざった森林)や、一部広葉樹林であることも多いです。
基本、各会社が扱う樹種についての知識があれば良いですが、針葉樹の生産性と広葉樹の公益的機能を組み合わせ、適正に配置する事は裏方業務の技術です。
例:植林された針葉樹の上部に広葉樹を残し、その養分によって植林木の成長を促す方法もあります。

人手の加わり方による分類

過去に人の手が入っているかどうかで分類される森林。全森林のうち天然林•天然生林は約6割、人工林は約4割である。古来森林と共に生きてきた日本において、天然林と天然生林の境目は曖昧である。

天然林
厳密には人手の加わらない森林。気候により区分される自然の森林であり、森林遷移(裸地から出発し、苔•地衣類が侵入し、土壌が形成され、植物が侵入し樹林が形成)の途中段階である陽樹•陰樹の森林、また最終段階である原生林。長く手の入ってない森林も含まれる。樹種に富み、地域の特徴が現れる。

奥山の写真

天然生林
過去に人手が加わっている天然林。例えば、伐採跡地に残った種子や植物が成長し森林になるもの(既に土壌ができている点で天然林と異なる)や、天然林に人手を加えながら、育成させている森林(里山)。

里山の写真

人工林
人が苗木を植栽したり、種を播いたりして育てた森林。主に木材生産が目的なので同一樹種を植える事が多く、日本ではほぼ針葉樹である。

人工林の写真

裏方の視点 林業を上記3つで行う事は可能ですが、生産性を重視した場合、針葉樹の「人工林」が中心です。しかし、人工林に到達する為に、天然林•天然生林を作業道開設や土場作成等で利用する事はあります。過去に人手が入らなかった主な理由は奥地•急傾斜地•岩地等ですが、人の手を入れない方が良い森林(天然林)を知ることも裏方業務の重要な技術です。

所有者による分類

PRIVATE KEEP OUTの看板の写真

所有形態によって分類された森林は複雑である為、かなり大雑把(適当)に歴史を解説する。
元々、江戸時代では幕府•藩の持つ「御山」と寺社の持つ「社寺有林」、個人が持つ「百姓林等」、村民が共有で利用する「村持ち山」•「入会林野(地域の人々が共同で利用•管理している山林)」等の4つに大きく分かれていたが、明治時代の地租改正に伴い、所有区分の明確化が行われ、大きく官有地と民有地に分ける作業が行われた。「御山」•「社寺有林」は官有地になり、「百姓林等」は民有地になったが、問題なのは「村持ち山」•「入会林野」であった。当時村民にとって森林は共有のものがほとんどで、明確な所有の証明は難しい。また所有すると税金を払わなければならない。地域による森林の扱いは様々であるがゆえ、官と民との対立•妥協が繰り返され、長い歴史の中で統合•分割•編入を繰り返しながら、現在の姿になった。

国有林
国が所有する森林。全森林の約3割。明治時代に「藩有林」•「寺社有林」•「所有者不明林(入会林野を含む)」を母体に成立した後も、民有保安林の買い入れや不要国有林の売り払いを行い、戦後には内務省の「北海道国有林」、宮内省の「御料林」を加え現在の姿に形成された。主な役割として、当初は木材生産機能を重視していた林野庁ではあるが、現在は水源を守り山地災害を防止する水土保全、野生生物の保護、環境保全、レクリエーション、木材の生産等の公益的機能が中心にある。

公有林(民有林)
地方自治体等が所有する森林。全森林の約1割。都道府県有林、市町村有林、財産区有林(市町村合併前の旧集落や旧村が持っていた財産を、現在も独自に管理•運営している)がある。市町村有林や財産区有林の源は「村持ち山」•「入会林野」が中心であり、公有だが公益的機能が中心に作られたものだけではなく、森林の役割は様々であるように思える。

私有林(民有林)
個人や会社などが所有する森林。全森林の約6割。私有林の源は百姓林や入会林野が中心であり、個人有林•社有林•共有林(複数の所有者で持つ森林)等に分かれる。零細(〜10ha)な所有が多く、奥山というよりは里に近いところに位置する。

裏方の視点 林業は上記3つ全てにおいて行われているが、多くの林業事業体が扱うのは私有林である。所有者の許可があれば施業が可能で、計画の主体が所有者•林業事業体にあるので経営がしやすい。一方、国有林•公有林の森林経営は国•地方自治体が行っている為、林業事業体は入札に参加して森林施業を行う事が多い。
森林の所有者を資料(登記簿森林簿等)や聞き取りによって調べる事は裏方業務の基本です。全ての行動はここから始まります。また、山に入ると国有林や公有林には看板や杭がありますので注意してみましょう。私有林に杭があるのは地籍調査が済んでいる場合か、所有者が自分で設置した場合である。

法律による分類

地球というボールを手渡している写真

森林法、自然公園法、砂防法等によって制限がかけられている森林「制限林」と、それ以外「普通林」がある。

普通林
5条森林の内、制限林でないもの。
※5条森林とは、森林法第5条の規定に基づく地域森林計画(都道府県が5年1期で立てる計画)の対象となっている民有林(公有林•私有林)である。

制限林
森林法、自然公園法、砂防法等によって制限がかけられている森林
主なものは、

保安林
森林法によって制限される森林で、全森林の約5割、国有林の約9割、民有林の3割を占める。

保安林とは、水源の涵養、土砂の崩壊その他の災害の防備、生活環境の保全・形成等、特定の公益目的を達成するため、農林水産大臣又は都道府県知事によって指定される森林です。保安林では、それぞれの目的に沿った森林の機能を確保するため、立木の伐採や土地の形質の変更等が規制されます。

出典:林野庁Webサイト外部リンク(保安林制度

保安林の種類
1.水源かん養保安林、2.土砂流出防備保安林3.土砂崩壊防備保安林4.飛砂防備保安林5.防風保安林6.水害防備保安林7.潮害防備保安林8.干害防備保安林9.防雪保安林10.防霧保安林11.なだれ防止保安林12.落石防止保安林13.防火保安林14.魚つき保安林15.航行目標保安林16.保健保安林17.風致保安林

出典:林野庁Webサイト外部リンク(保安林の種類別の指定目的)

保安林で何かを行う予定であれば、各都道府県窓口に相談してください。

砂防指定地・地すべり防止区域・急傾斜地崩壊危険区域
砂防三法(砂防法、地すべり等防止法、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律)によって制限される土地で、土石流・地すべり・がけ崩れ等の土砂災害対策として国土交通大臣•都道府県知事が指定している。

 砂防指定地の指定を要する土地(区域)のうち、主なものは、以下のとおりです。
[1] 渓流若しくは河川の縦横浸食又は山腹の崩壊等により土砂等の生産、流送若しくは堆積が顕著であり、又は顕著となるおそれのある区域
[2] 風水害、震災等により、渓流等に土砂等の流出又は堆積が顕著であり、砂防設備の設置が必要と認められる区域

出典:国土交通省Webサイト外部リンク(砂防指定地とは

 地すべり防止区域の指定を要する区域は、以下の[1]及び[2]の区域を包括する地域(「地すべり地域」と総称。)であって、公共の利害に密接な関連を有するものです。

[1]地すべり区域
 ・地すべりしている区域
 ・地すべりするおそれのきわめて大きい区域

[2]地すべり区域に隣接する区域
 ・地すべりを助長・誘発している地域
 ・地すべりを助長・誘発するおそれがきわめて大きい地域

出典:国土交通省Webサイト外部リンク(地すべり防止区域とは

 急傾斜地崩壊危険区域の指定を要する土地(区域)は、 以下の[1]及び[2]の区域を包括する区域です。
  [1]崩壊するおそれのある急傾斜地(傾斜度が30度以上の土地をいう。以下同じ。)で、その崩壊により相当数の居住者その他の者に被害のおそれのあるもの
  [2][1]に隣接する土地のうち、急傾斜地の崩壊が助長・誘発されるおそれがないようにするため、一定の行為制限の必要がある土地の区域

出典:国土交通省Webサイト外部リンク(急傾斜地崩壊危険区域とは

砂防三法によって制限される土地で何かを行う予定であれば、各都道府県窓口に相談してください。

自然公園(国立公園•国定公園•都道府県立自然公園
自然公園法によって制限される土地で、環境大臣•都道府県知事が指定している。

この法律は、優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的とする。

引用:自然公園法(第1条)

自然公園はさらに保護の重要度に応じて、特別地区(特別保護地区、第1〜3種特別地域)と普通地域に分けられています。制限の内容が各地区•地域によって変わります。

自然公園法によって制限される土地で何かを行う予定であれば、各都道府県窓口に相談してください。

他には自然環境保全法による自然環境保全地域、鳥獣保護の法律による特別保護地区、文化財保護法による史跡名勝天然記念物•伝統的建設群保存地域等がある。

裏方の視点 林業は普通林を中心に行われていますが、制限林を扱うことも多々あります。林業に関する主な制限は立木の伐採、土地の形質変更(作業道の開設等)、伐採後の植栽義務等である。最も多いのは保安林です。河川沿い•急傾斜地では砂防指定地等を疑いましょう。近くに有名な国立公園や〇〇公園と名のついた森林があれば自然公園を疑いましょう。山には看板が立っていることが多いですが、正直どこが制限林だか分かりませんので、資料(森林簿等)や聞き取りによって調べる事は裏方業務の基本です。まずは国•地方自治体の窓口に相談しましょう。

まとめ

森林の種類について多少はご理解頂けたでしょうか?
「所有者による分類」と、「法律による分類」は特に複雑で一つの山にいくつもの〇〇林•〇〇地が重複して存在することがあります。

最後に、林業の裏方(営業•森林調査•設計•管理•事務)の視点で見た森林の取り扱い方をまとめます。

気候による分類
元来そこにあるべき森林を知ることは、森林の過去•現在•未来を考察するのに役立つ。

樹種による分類
針葉樹の生産性と広葉樹の公益的機能を組み合わせ、適正に配置する事が必要。

人手の加わり方による分類
人工林を中心に林業をしつつ、人手を入れない方が良い森林(天然林)もある。

所有者による分類
森林の所有者を資料(登記簿•森林簿等)や聞き取りによって調べる事が必要。

法律による分類
制限林は、林業に関して立木の伐採、土地の形質変更(作業道の開設等)、伐採後の植栽義務等の制限がある。普通林•制限林を資料(森林簿等)や聞き取りによって調べる事が必要。

さて、裏方業務を17年やっていると、感動する山々に多く出逢います。二度と立ち入りたくない山もありますが…筆者の思う裏方業務のメリットは、いろんな山に入れる事以外にも、同じ山に何度も入る事で違った視点を獲得でき、飽きない事です。

もし、あなたが森林の種類に興味を持って、そんな環境で働いてみたいと思う方は⬇︎

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