「林業といえば木こりだけど、木こり以外は誰が何をやってるの?」
じつは林業には多くの人が関わっています。
なぜなら木こりは伐採のプロであり、他に何人ものプロや関係者によって林業という業界を作っています。
私は林業の裏方(営業•森林調査•設計•管理•事務)に17年程度携わっており、国内4箇所の林業事業体で働いてきた。林業は土地に根ざした仕事であり、地域によって違いはあるが、本質的に仕事内容は同じである。
この記事では、林業に関わる人々を、裏方との協力関係とともに紹介します。
この記事は、主に以下の人々に役立つ知識になります。
・林業の裏方(森林施業プランナー•事務方•森林調査員等)の新人
・林業への就業•転職を考えている人
・山•林業の関係者または利用者…森林所有者、登山者、山菜採り、猟師、渓流釣り人等…
結論、林業の裏方が関わる会社•人々•仕事内容を知ることで、林業全体の相関関係を理解します。
林業は関係者無しには成り立たない!
よく林業は「自然とだけ関わっている仕事」のように紹介される事もあるが、私はここ17年間の裏方業務の中で、協力者なしではやってこれなかったと思っている。自然を相手にすると、予期せぬことが必ず起きる。そして、1つの山に手を入れるだけでも、関わる人々は専門家が多い。もはや1人で林業できるのはスーパーマンだけである。それを分かった以上は、関係者について知る必要性があるのだ!
※下記の関係者のどこにでも裏方業務全般や一部を行う人がいます。
林業の関係者を紹介!
ここでは、それぞれ紹介するとともに、筆者が関わってきた会社•人々との関係性を解説します。
森林組合
森林•林業のプロフェッショナル!
森林所有者が出資して設立した協同組合
日本各地に613組合があり、原則組合員のための森林経営、購買業務、林産物の取扱い等を行なっています。また都道府県には森林組合連合会があり森林組合の経営や市売市場等を行い、全国組織としての全国森林組合連合会があります。元々国の政策として発足したことや、森林組合法に基づいた組織であるため、法人でありながら半官半民の性格を有しています。組織図としては、組合員から選ばれる役員(組合長•理事•監事•専務等)の下に、総務課•森林整備課•現場作業員等が技術系職員として雇われています。一言で言えば地域の森林の窓口のような所で、現地に関しては市町村より専門的な知識を持っています。
裏方から見た協力関係
ここが裏方の最も多い勤務先ですが、協力関係としては情報量の多さです。国•地方自治体とのつながりも深く、行う事業が幅広いので、広く知識があります。
林業会社
林業のプロフェッショナル!
林業を専門に行う会社(法人•個人事業主)
林業全般を行う会社もあれば、社長が得意な仕事内容だけを行う会社も多く、社長•事務•現場作業員で構成されることが多い。また法人化せずに個人で請負専門の木こりも多くいます。
裏方から見た協力関係
ここに勤務していることが多い裏方ですが、協力関係としては、作業の一部を依頼する事がよくあります。狭く技術に特化していて、民間としての経営能力も高いので頼りになる存在です。
森林所有者
所有林のプロフェッショナル!
森林の土地の所有者•企業 ※国•地方自治体の所有林は除く
森林所有者とは「権原に基づき森林の土地の上に木竹を所有し、及び育成するこ とができる者」(森林法第2条第2項)、「権原に基づき森林の立木竹 の使用又は収益をする者」(森林法第10条の7)となっている。個人有林、共有林、社有林等所有形態はさまざまで、日本の森林の約6割を占める。
裏方から見た協力関係
森林所有者なくして林業は成り立たない。最も重要な相手になります。林業事業体は森林所有者に営業、契約し、作業を行い、木材販売等し、収入を得ます。
地域の方
地域のプロフェッショナル!
地域の住人、地域団体(自治会等)、地域の土地所有者、地域の利用者等
森林以外も含め、地域を存続させている人々•団体。
裏方から見た協力関係
林業は地域に根ざした仕事であり、地域の協力なくして林業は成立できない。森林への興味が失われている現在、昔から地域に住んでいる人々が、最もその地域の現況•問題に詳しく、森林所有者の情報、山の情報、作業の進め方等相談できる相手である。
国•地方自治体
行政のプロフェッショナル!
国(林野庁他)
主に民有林行政と国有林野事業を行う。
裏方から見た協力関係
国有林で作業を行う際、地域にある森林管理局(森林管理署・支署、森林管理事務所)に相談し手続きを行う。
都道府県(各都道府県の林業担当窓口)
主に森林整備、保安林制度、治山事業(山地災害の対策と復旧)、林業の担い手の育成、林業技術の普及指導、都道府県有林の管理等を行う。
裏方から見た協力関係
補助金•保安林作業の申請•届出。都道府県単独事業(都道府県民税)、都道府県有林の作業を行う際に、手続きをする。林業の制度面に詳しいので相談する事も多い。
市町村(各市町村の林業担当窓口)
地域の森林•林業に関して広く行なっている。
裏方から見た協力関係
伐採の届出、森林経営計画の作成、市有林•林道で作業を行う際に手続きする。その他林業に関する相談。
第三セクター(林業公社等)
地方自治体と民間の団体・企業が共同で設立した法人。様々な法人がある。林業公社は分収造林を行なっている。
※分収造林とは、森林所有者から土地の提供を受け、公社が費用負担をして森林を育成し伐採したら売上金を両者で分ける制度
裏方から見た協力関係
分収造林を作業する際に手続きをする。
※原則、国•地方自治体の所有林を作業する際は、入札に参加し落札してからである。
木材市場
木材流通のプロフェッショナル!
原木市売市場
森林所有者•林業事業体等から集荷した原木を種類•品質•長さ•太さごとに分け保管し、競り売り(複数の買い手に価格を競争させ、最高値を付けた人に売ること)にかけ、製材業者•木材販売業者に販売。主に出荷者からの手数料により運営。
裏方から見た協力関係
搬出間伐•皆伐ででた木材を出荷します。また木材相場に最も詳しいので、今どんな材が高く売れているかを知れば、伐採の時期•採材(伐採した木をどの長さに切断するか)の判断材料になります。
チップ業者
木材チップのプロフェッショナル!
木材チップ(木材を粉々にして木片にしたもの)を生産する会社
主に製紙用パルプの原料である木材チップ•バイオマス発電の燃料用チップを生産します。
裏方から見た協力関係
搬出間伐•皆伐ででたC材(曲がり•傷•割れ•腐り等)を買い取ってもらいます。
製材業者
木の特性を知り尽くしたプロフェッショナル!
原木を製材し販売する会社
製品(角材•板材等)に応じて製材工場•合板工場等の大小様々な業者があります。販売先の注文に応じて、原木を製材(切る•削る)し、規格通りの製品にします。原木は水を多く含んでいるので、乾燥すると変形(縮み•曲がり•割れ)します。製材業者は木の種類•特徴•年輪等を見ながら乾燥後の仕上がりを想像し、製材方法を決め、一本の木から最大限に多くの製品を取れるよう実践します。
裏方から見た協力関係
原木を市場に出す場合は接点はありませんが、製材業者から欲しい木の注文があった時や、契約した製材業者に卸す場合に買い取ってもらいます。筆者はここでも裏方業務を行ってました。
建設業者
道路•地面のプロフェッショナル!
土木工事会社等
建設業は幅広いですが、林業で関わるのは道路の補修(コンクリート舗装•構造物の設置等)なので、主に道路•橋•堤防等を作る土木工事会社(地元の土建屋さん)を指します。
裏方から見た協力関係
林業事業体で手に負えない道路補修があると依頼します。また建設業者からも伐採等仕事を頼まれることも多く、関係は深いです。道路や地面の知識は、林業の及ぶところではない専門知識があるので、予算や目的を共有して依頼しましょう。
採石業者
様々の種類の土や岩のプロフェッショナル!
採石•砂利等を採取•販売する会社
林業で扱うのは限られていて、主に山づり(20cm以下の大小の岩が混ざった石材)やクラッシャーラン(岩石•コンクリート•レンガ等を砕いたもの)です。有料で現地までトラック運搬してくれる事もあります。
裏方から見た協力関係
道(公道•私道•林道•作業道)の補修で協力が必要です。重機やトラックを何回も走らせていると、必ず道が傷んでスリップ•崩壊等の危険が現れます。必要な採石の種類・量(㎥)やトラックの大きさ(何t車)、二駆•四駆を確認しておきましょう。
苗木業者
樹木を科学する苗木のプロフェッショナル!
苗木の生産•販売を行う会社
専門の業者以外にも、農家•庭木屋•林業会社が生産販売したり、代理店として森林組合が斡旋している事もあります。林業で扱うものは針葉樹(スギ•ヒノキ•マツ)が多く、裸苗•コンテナ苗と種類があります。苗畑を作り、環境から学びながら種や挿木から育成させ、販売します。
裏方から見た協力関係
春に植栽を計画してるなら、注文は樹種•本数が分かり次第すぐ、春前までに行わないと入手できない場合もあります。
トラック運転手
木材と道路の知識が豊富なプロフェッショナル!
木材運搬を専門とするトラックの運転手
一般の運送会社が行う場合もあるが、木材運搬専門の運送会社や個人でやっている方が多いです。その理由として、丸太を積むにはグラップル(木材をつかむアタッチメント)付きの重機やトラック、フォークリフトを使う免許が必要で、また丸太が転がり落ちないように効率よく積んだり、林内の悪路を走るにはテクニックや経験が必要だからです。
裏方から見た協力関係
社内に上記免許取得者や重機•トラックを持っていれば自社で木材運搬できます。そうでなければ依頼することになるので、道の種類•木の種類•運搬量•運び先は理解しておきましょう。
機械回送業者
重機と道路の知識が豊富なプロフェッショナル!
重機の回送(運搬)をする会社
重機の回送は専門の会社もあれば、重機のリース会社、機械修理業者、トラック運転手、現場作業員が行う事もあります。小さな重機は普通免許の2~4t車に乗せることが出来ますが、林業で使う機械は大型トラックでないとほぼ運べません。
裏方から見た協力関係
社内に大型免許取得者がいて、大型トラックを持っていて、回送する重機の免許取得者がいれば自社で回送出来ます。そうでなければ依頼する事になるので、各重機の重さとトラックの種類の知識は必要です。
機械修理業者
機械の構造を熟知したプロフェッショナル!
機械の修理を行う会社
機械といってもチェンソーから重機まで多岐に渡りますが、だいたい購入先やメーカーが修理します。特に故障箇所によってはメーカーでないと出来ない場合も多いです。また簡易な修理であれば、地域にチェンソー等の修理店、重機等の修理店があります。
裏方から見た協力関係
簡易な修理は木こりが自分で行うか、持ち運べるものなら修理店に持っていきます。重機の修理になると、現場に修理業者を呼んで調べてもらい、直らなければ重機回送の手続きを行い修理業者に運びます。現場は電波が入らなかったり、作業を中断できない事もあり、裏方が手配を行う事も多いので多少の機械の知識は必要です。
山道具屋
山道具•資材の取り扱いのプロフェッショナル!
林業の道具•資材を扱う会社
一言で言っても、山に行くための道具、現場作業で使う道具•資材、調査に関わる道具等様々な会社があります。専門店には各社営業マンがいて林業事業体等を巡回しながら商品を紹介してくれます。木こりが使う身の回りの道具は各地域に一つくらい扱う店(森林組合•林業用品店等)があります。
裏方から見た協力関係
現場作業では道具や資材は急に必要になります。ホームセンター•地域の店•専門店を事前に調べ購入•連絡できるようにしておきましょう。ネットで買うのも安価でおすすめです。
重機のリース業者
様々な機械の知識が豊富なプロフェッショナル!
重機レンタルの会社
建設業で使う重機を主に扱っている。林業機械のような専門的機械は扱いが少ない。
裏方から見た協力関係
林業機械は非常に高価な機械で気軽に買えない。また作業内容に応じて必要な機械も変わるので利用することが多い。1日単位でも借りれるが、月単位で借りれば割安になるので、作業計画をしっかり立てて利用しましょう。特に林業機械は秋〜冬は空いてなく、遠くから取り寄せる場合もあるので、早めに計画しましょう。
まとめ
林業は多くのプロフェッショナルによって、成り立っていることをご理解いただけたでしょうか?
林業の裏方から見た協力者は次!
森林組合=森林所有者が出資して設立した協同組合 森林•林業のプロフェッショナル! 林業会社=林業会社(法人•個人事業主) 林業のプロフェッショナル! 森林所有者=森林の土地の所有者•企業 所有林のプロフェッショナル! 地域の方=地域の住人、地域団体(自治会等)、地域の土地所有者、地域の利用者等 地域のプロフェッショナル! 国•地方自治体=国、都道府県、市町村、第三セクター 行政のプロフェッショナル! 木材市場=原木市売市場 木材流通のプロフェッショナル! チップ業者=木材チップを生産する会社 木材チップのプロフェッショナル! 製材業者=原木を製材•販売する会社 木の特性を知り尽くしたプロフェッショナル! 建設業者=土木工事会社等 道路•地面のプロフェッショナル! 採石業者=採石•砂利等を採取•販売する会社 様々の種類の土や岩のプロフェッショナル! 苗木業者=苗木の生産•販売を行う会社 樹木を科学する苗木のプロフェッショナル! トラック運転手=木材運搬を専門とするトラックの運転手 木材と道路の知識が豊富なプロフェッショナル! 機械回送業者=重機の回送(運搬)をする会社 重機と道路の知識が豊富なプロフェッショナル! 機械修理業者=機械の修理を行う会社 機械の構造を熟知したプロフェッショナル! 山道具屋=林業の道具•資材を扱う会社 山道具•資材の取り扱いのプロフェッショナル! 重機のリース業者=重機レンタルの会社 様々な機械の知識が豊富なプロフェッショナル!
今回は割愛しましたが、林業の定義では森林の育林•伐採以外にも、薪や木炭の製造,樹脂•樹皮•しいたけ類等林産物の採集、野生動物の狩猟なども含まれており、これらを合わすと相当な関係者になります。林業の裏方をやっていると必ずこの人達とは顔を合わせますし、木こりが副業や趣味でやってることも多いです。
もし、あなたが林業の関係者に興味を持って、他の仕事も知りたいと思う方は⬇︎
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