林業といえば木を伐ることでしょ?
でも、
- 「そもそも誰が植えたの?」
- 「誰が育てたの?」
- 「なぜ道を山につけてるの?」
- 「何故あの山は丸裸になってるの?」
等々、疑問はつきません。さらには林業は森林破壊で悪いものと思ってる方もいると思います。
じつは林業には伐採以外にもいくつもの仕事があります。そして、育てる為に伐っている伐採もあります。
私は林業の裏方(営業•森林調査•設計•管理•事務)に17年程度携わっており、国内4箇所の林業事業体で働いてきた。林業は土地に根ざした仕事であり、地域によって違いはあるが、本質的に仕事内容は同じである。
この記事では、林業の仕事内容について解説しています。ここでは大きな流れを書き、具体的な技術は木こりのサイトに任せます。
この記事は、主に以下の人々に役立つ知識になります。
・林業の裏方(森林施業プランナー•事務方•森林調査員等)の新人
・林業への就業•転職を考えている人
・山•林業の関係者または利用者…森林所有者、登山者、山菜採り、猟師、渓流釣り人等…
結論、林業は伐採だけでなく、木を育てる事も含めて林業であり、森を循環させることなのです。
林業とは森を循環させること
本来、林業とは木材の収穫・販売である。
まず皆伐(木を全部伐ってしまう)が前提にあり、その売上によって、次の木・森を育てるという、非常にシンプルな経済的行為である。
天然林は、自然によって競争が行われ適正な樹木間を保ちますが、人工林の場合、まず密に植えます。そして、周りに生えてきた草・低木を刈り、それぞれの木の成長を見ながら間引きをし、販売できる木を育成していきます。
なので、途中で手入れをやめてしまうと、光は入らず、植生は乏しくなり、土地は痩せていき、土砂災害の危険にさらされます。
結果、全森林の4割と言われる人工林は、育てるための伐採が必要になります。
では、全部伐採して放置すれば?
確かに、立地によっては、自然に広葉樹が生えてきて山にはなりますが、針葉樹(スギ・ヒノキ・マツ等)のように効率的に収穫するのは難しいです。林業の存続の為には、人間が木を植え、木を育て、伐採するサイクルが必要になります。
林業の現状
では現在は、木・森を育て皆伐を行うのと同時に、森を維持することが非常に重要な問題になっています。結局は同じことですが、順序が入れ替わってきている理由があります。木材価格の低下、労働者不足、補助金の導入等が大きな原因となっています。
すなわち、皆伐による売り上げによって、木・森を育てることが困難になり、労働者が流出したので、山が荒れた。そこで国•地方自治体は、皆伐以外の育林に補助金を投入し、また自ら事業を行い、森林荒廃を防いでいる。林業の自立は、数十年前から大きな問題になっている。
林業の仕事内容
では、実際どういう作業が行われているのか解説していきます。
林業は50〜60年のサイクルで循環しています。
地拵え
季節
冬〜春
※皆伐して植えるまでの間であれば、いつでも良いのだが、皆伐後すぐが望ましい。なぜなら放置すると草が生え、刈り払いの手間が増えるし、重機が届く範囲は重機でやりたいからである。また皆伐現場は遮るものがないので夏はきつい。
目的
伐採跡地は残材(枝・枯木・根)が散乱し、植林できる土地が少なくなるので、残材を分散して寄せ集めて、苗木を植えやすいようにする。
方法
重機が入れば、グラップルで掴んで、植えづらい場所(岩場等)に集める。それ以外は人力で、長い棒を使って、てこの原理で、残材を動かし、うね状に集める。急斜面では杭を打って転がらないようにする。
植栽
季節
春
※1月〜5月と地域によって差がある。北国は秋に植える。
目的
スギ•ヒノキ•マツ•その他広葉樹を将来の収穫を目的として植える。
方法
苗木屋から苗が届いたら、枯れないように現場に仮植(一時的に植えておく)します。その後、1日で植える苗木を運び、1〜2m間隔で植えていきます。苗木にも普通苗•コンテナ苗があって、作業方法が少し変わります。
また獣害対策として防護ネットを設置する事もある。
下刈
季節
夏
※6月〜8月
目的
植栽木の成長促進。雑草木に太陽と水を奪われないようにするための作業。7~10年生になると下草の高さを植栽木が超えてくるので完了。
方法
刈り払い機を使い、植栽木の成長を阻害する雑草木のみを刈り取る。
除伐•つる伐り
季節
秋
※9月〜10月
目的
植栽木の成長促進。下刈の延長戦のようなもので、植栽木同士の枝葉が触れるようになってくると完了。
方法
チェンソーを使い、侵入木や植栽木に巻きついたつるを伐りつつ、発育不良や曲がりの植栽木を伐採。
切捨間伐
季節
秋~冬
※10月〜2月 春夏は残す木に傷がついて、腐りが発生しやすいので避ける。しかし環境整備として行う場合には季節を問わない。
目的
樹木の密度管理と地表の植生を回復させる。※木は上方が開けてさえいれば、上にはどんどん伸びていきます。しかし太さは葉に当たる日光や、根から吸い上げる水や養分に影響を受けます。すなわち間引きをすると、枝葉が左右に成長するので、日光を多く受け、根も左右に広がり、水•養分を大き吸収できます。枝葉の広さと根の広さは同じ位です。
ではどんどん間引けば、より太くなって良いのでは?
木の成長には湿度と外部からも影響を受けます。間引きすぎると木が乾燥して成長を止めてしまいます。また風や雨の影響をダイレクトに受けて、曲がり木•倒木•土砂災害の危険もあります。木が揺れた時、木同士の枝葉が触れるくらいが良いです。
搬出できない場所では、20〜30年生あたりになると完了。
方法
チェンソーを使い、曲がり•傷•割れ•腐り•今後の成長具合が見込めない木(上方に他の木が覆い被さり、いずれ枯れる木)を中心に伐りつつ、混んでいる箇所も間引く。伐った木は現地に集積します。※あくまでバランスの取れた山にしないと、地表に光が入りません。
林業という経済活動における間伐の意義は総材積を増やす事とも言えます。
搬出間伐
季節
秋~冬
※10月〜2月 春夏は残す木に傷がつき腐りが発生しやすい。また伐った木もすぐ運ばないと木材に虫•腐りが発生しやすく価値が下がる。
目的
切捨間伐の目的に木材販売の収益化を加えたもので、30年生以上の木材販売可能の木になると行います。皆伐前の最終整備として行う事も多いです。また、木材搬出のための作業道開設(車が走る道ではなく、林業機械が走れるような簡易道)も行います。
方法(作業道開設)
チェンソーで、予定路線を伐採し、重機で土を切り盛りして作業道を作成する。※傾斜•地質•水脈を見て崩れないように、また台風•大雨に備えて作りすぎないように作成。
方法(間伐)
チェンソーまたチェンソー付き重機を使い伐採し、作業道に届かない木はワイヤー付き重機を使って木を引き寄せます。引き寄せた木を、人力•チェンソー付き重機で販売できる長さに伐り揃えたら、林業用運搬車で、木材をトラックのあるところまで運び、市場等に販売。※切捨間伐を過去に行っていれば、比較的良い木しかないはずなので、バランスを取る伐り方をします。
皆伐
季節
秋~冬
※10月〜2月 春夏に伐ると、木材に虫•腐りが発生しやすく価値が下がる。
目的
木材を搬出•販売し収益化。40年生以上の木になると行います。※過去の手入れ次第では60年生でも収益化が怪しい山はあります。
方法
搬出間伐と原則同じですが、残す木がないので、可能であれば作業道を追加し、道の周りからどんどん伐採•搬出していきます。
他にも枝打ち等がありますが、筆者は近年行っている人をあまり見ません。
また林業と呼べるか分からないですが、危険木を専門に伐る特殊伐採という仕事や、竹林の伐採、広葉樹の伐採、さらには庭木の剪定や街の草刈り等、林業関係者は活動の場を広げています。
まとめ
林業の仕事内容について多少はご理解いただけたでしょうか?
仕事内容の目的は次!
地拵え 残材を分散して寄せ集めて、苗木を植えやすいようにする 植栽 スギ•ヒノキ•マツ•その他広葉樹を将来の収穫を目的として植える 下刈 植栽木の成長促進 除伐•つる切り 植栽木の成長促進 切捨間伐 樹木の密度管理と地表の植生を回復させる 搬出間伐 切捨間伐の目的に木材販売の収益化を加えたもの 皆伐 木材を搬出•販売し収益化
最初の疑問に立ち返り、
- そもそも誰が植えたの?
- 誰が育てたの?
これは森林所有者であり、林業事業体等であり、目的は森林の維持と経済活動である。
森林の維持という観点から見ると、林業は伐採だけでなく、地拵え〜植林〜下刈〜除伐のように木を育て、また切捨間伐のように、木を育てる為の伐採(既に人間が植えた木を密度管理のために伐る)も含めて林業であり、森を循環させることなのです。
- なぜ道を山につけてるの?
- 何故あの山は丸裸になってるの?
これも森林所有者が中心となり、林業事業体等が行い、目的は経済活動である。
経済活動という観点から見ると、林業の搬出間伐〜皆伐は確かに一時的な収入にはなります。しかしそこで終われば、山は広葉樹化し、環境的には悪くないですが、林業は終わります。ましてやハゲ山になってしまえば林業は森林破壊で悪いものと思ってる方が正しくなります。なので、林業の存続の為には、効率的に収穫できる木を植え、木を育て、伐採する必要があります。
もし、あなたが林業の仕事に興味を持って、関係する他の仕事も知りたいと思う方は⬇︎
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